イカはいかが闘病記

脳出血で倒れたオジサンの闘病記です

ふたりで

今日も午前中だけ仕事に。

仕事から帰って来てから支度をして、わたしの実家に行く。

 

高速道路を走っている途中、主人の病院が見える。娘が「パパのところにはいつ行くの?」と。

ジージ、バーバのところに行った後。夜かな」

そんな話をして私の実家に。

実家の前に着くと両親が出迎えてくれた。

「モコは?」

「みんなで病院に行くから、家でお留守番させてる」

ちょっと残念そう。

私の母は動物が苦手で、私の実家では小動物は飼った事はあっても、犬や猫は飼った事がなかった。でも姉や私が犬や猫を飼ってからは、可愛がってくれる。

 

実家ではお正月のご馳走が準備してくれていた。

ありがたくみんなで頂く。

食べた後はコタツでゴロゴロ。

正しいお正月の過ごし方。

久々に私も休めた。

実家は掘りごたつなので、あたたかい。

いつものお正月。

でもそこには毎年来ていた主人がいない。

 

お土産をもらい実家を出発。

いつも娘は私の実家から帰る時「ジージ、バーバの家から帰る時って悲しくなるよね。泣けちゃう」と言う。

本当にそうだ。

私の両親は70代だが、今のところ2人で生活してくれている。こんな状況になった私達を色んな面で支えている。本当に感謝している。

みんなが心と体とお金に余裕があったから今までの生活出来ていたけれど、余裕がなくなるとギスギスしてしまう。

「当たり前だと思っていた事は、当たり前じゃないんだ」

今を大切に生きなきゃと強く感じる。

 

病院に着き、病室に行くと主人がいない。

夕飯を食べに行っているみたいだ。

息子と話す。

「お父さんとちゃんとふたりで話して自分の気持ちを伝えなさい」

主人が倒れてから娘や私は自分の気持ちを主人に伝えて来たし、主人の気持ちも聞いてきた。

 

でも息子だけはまだ話していなかった。

 

息子も私と話すと、色々と抱えているものがあるが、普段それをほとんど出さない。

自分を表現するのが苦手だし、面倒臭さいし、それを話しても解決しないじゃんと言って話してこなかった。

「私の口からあなたの話をするのと、あなたから直接気持ちを伝えるのは違うから。お父さん、ちゃんと私達の話もわかるし受け止めるって話していたから」と。

「お母さん、俺どうなるかわからないからすぐ部屋のそばにいて」

「わかった。すぐ側にいる」

そんな話をしていると主人が来た。

 

「じゃあ私達は外に出るね」

時折、病室から声が聞こえる。

30分近く話していた。病室の扉が開いた。

「ちゃんと話せた?」と息子に聞くと「話せた」と。

主人は涙を流していたし、息子の目も赤かった。

 

気持ちは伝えられたみたいだ。

 

「私達これからどうなるかわからないけど、まずは自分がやらなければならない事をやらないと。パパはリハビリ、あなた達は勉強、私は仕事と家事とみんなのサポート。出来る事をしっかりやろう」とわたしが話した。

 

家に主人宛てに届いた年賀状を主人に見せる。

「あっ〇〇さんだ」と言う。

何枚か見せるとちゃんと合っているものがあるが、中には言葉をつまらせてしまうハガキもある。

苗字の一文字、二文字だすとスラスラと出てくる。

「漢字読めるの?」と聞くと「頑張ってリハビリしてるから」。

文面も大体読めていた。

「このまま読めるようになればいいね」と話した。

 

帰りはエレベーターのところまで見送りに来てくれた。

いつも右足につける器具をつけていないので

「つけなくていいの?」と聞くと「いい」と。

右足の器具を外して歩く練習を今日からしていると。

「器具を付けてないと足が違うところを向くから痛いんだよね」と。

確かに歩く姿をみてると、右足の足首がいったん内側に折れてから正しい向きに向く。

「リハビリ頑張って」と話すと「わかった。来てくれてありがとう」と言いながら握手し、手を振っていた。

 

歩きながら「お父さんすごい元気だったね」と娘が。

「あなた達2人が来てくれたのがきっと嬉しかったんだよ」

そんな話をしながら病院をあとにした。